ショートエッセイ第2回【海の家80’】−名古屋東山インポートセレクトショップregatta−
2022.07.31 Sunday
ショートエッセイ第2回【海の家80’】
−名古屋東山インポートセレクトショップregatta−
「海の家」好きですか?
ぼくは大好き。
炎天下の砂浜で寝そべってるより、
屋根のある所でうとうと昼寝してるほうが好き。
屋号も「つるや」とか「ちどり」とかそんなのがいい。
着替えとかひと泳ぎしたあとのシャワーにも困らないし、
飲食関係の調達にもすこぶる便利である。
海の家の飲食関係というと、
まずカレーライス、ラーメン。
ちゃんとしたところではどちらも自家製でつくる。
ちゃんとした海の家というのは家族総出でやってる海の家のことである。
年季がはいって柄がちょっと薄れた皿で提供されるカレーがいい。
真っ赤な福神漬けがよく合う、いわゆる”うちのカレー”ってやつだ。
ラーメンもシンプルな醤油味だから、
お昼にカレーとみそおでんかなんか食べて、
おやつにラーメンなんていうのもいい。
優しそうなお父さんが調理場、
お客さんには愛想がいいけどお父さんにはキビシイお母さんが接客、会計そのほか全部、
高校生の娘が店先の焼き場担当で大あさりやトウモロコシを焼くかたわら、
ジュースやお菓子などの販売もやる。
娘はたいてい真っ黒に日焼けして、
もちろん茶髪で、
学校指定のジャージの短パンにキティちゃんのサンダルなんか履いてる。
たまに「大あさりいかがですか〜」とか無表情で言ったりする。
たまに友達が通るとキャッキャとふざけてる。
ほんとは友達と遊びたいのに手伝わされてるから、
ちょっとふてくされ気味に大あさりやトウモロコシを焼いているのはいい風情である。
でも意外に仕事はちゃんとやって、大あさりも上手に焼いたりする。
ちょっと手がすくとすぐ遊びに行こうとするけど、
お母さんに用事言いつけられて、
ふくれっ面でビールケースを運んだりしてるのはとてもいい。
こんな昔ながらの海の家はどんどん減ってきてさびしい限り。
そのかわりにケバケバしいしつらえのシーサイドなんとかみたいな名前で、
ヒップホップをガンガンかけてロコモコ丼とか出すタイプが多くなった。
ああいうのは海の家とは言わない。
近づかないにこしたことはない。
ちゃんとした海の家が残ってるうちにまた行っとかないと。
あの頃高校生だった娘がお母さんになって海の家ついでてくれるといいな。
よく似た高校生の娘が大あさり焼いたりしてて。
海の家は好きだけど、海で泳いだりするのははそんなに好きじゃないです(笑)
ーおわり